無。

なにもありません。

俺はうさぎ

 俺はうさぎ(のようでありたい)

 

 うさぎ、小さくて柔らかくてとてもかわいい。猫や犬に比べると少数派だけどペットとして飼う人もそれなりにいる。食糞とか人間の想像を絶する行動をするそうだけど、理に適っているようなので目をつぶれる。

 人間の視点で見ればとても良い愛玩動物だろうけど、残念ながら自然界では弱肉強食の弱肉。中〜近世ヨーロッパではスポーツ・ハンティングの獲物としてバンバン狩られていたのも有名。とても弱い。弱点が多くて、外的要因以外でも簡単に死んじゃう。儚すぎて悲しい。あんなにかわいいのに。かわいいから儚いのか。

 

 そんなに弱いのになんでうさぎ気取りたがるのかって言うと色々訳はある。 

 

 うさぎは早い。種類によっては最高で時速70kmで走れるそうだ。火事場のバカ力的最高速度なのかもしれないけど、だとしても早い。たぶん犬より早い。生き残るために必要な逃げ足なんだろう。だけどその逃げ足のおかげでうさぎはしばしばハイスピードの象徴として扱われる。

 僕は遅い。(人間誰しも、大なり小なりそういうところはあると思うけど、)仕事にしろ人間関係にしろ面倒事を一度認めてしまうと腰が重くなる。面倒な事柄は放っておけばおくほどより面倒になることがわかっているはずなのに、しばしば初動が遅い。天敵の存在を認めれば機を失せずに走り出し、圧倒的な速度を以て突破するうさぎにあやかりたい。

 

 うさぎは弱肉強食の弱肉だと今しがた書いた。だからこそ彼らはたくさん子どもをつくれる。そういう種が生き残ってきたのか、そうなるように変わっていったのかはわかないけど、とりあえずうさぎはむっちゃ子作りする。ここまで頑張ってまじめな文体で書いてきたけど、結局はこれだ。

 うさぎは常に発情期、というのは必ずしも正確ではないようだけどむちゃくちゃ頑張っちゃうらしい。オスは一度発情期になれば見境なく、にわとりや猫にも入れようとする。見境ないどころの話じゃない。もう入るなら何でもあり。これは凄いことだと思う。

 童貞の僕からすれば、羨ましい。今まで何度も半ばで折れてきた。とても悔しいことだし、自身に対して疑心暗鬼になってしまう。もしかしたらこの出来事が自尊心を下げる要因になるかもしれない。人間と野生動物を同列にして比較するべきではないけれど。

 

 何度も言うけどうさぎは狩られる側だ。天敵も多いし神経質なせいで食われなくても簡単に、勝手に死んじゃう。それでも自己保存の本能に従ってたくさん子孫を残そうとする。生き残れる確率が低いからたくさん子どもを残そうとするうさぎの多産に本能以外の何を(強引に、)見出すかは受け取る人間の勝手だ。でも僕はそこに何としても自分の爪跡を残そうとする泥臭さやしぶとさを感じずにいられない。

 

 僕が「俺はうさぎ」なんてごくたまに口走ったりするのは、結局うさぎの生き様にそういうものを勝手に見出し、勝手に憧れたりするからだ。