無。

なにもありません。

不完全な

 恋愛しないのがかっこいいと思っていた。頑張ったって無理だろってツッコミはさておいて。そういう考えを持ってしまうに至った原因はいくつか思い当たる。

 

 昔も今もメンヘラをこじらせている。周りにも当然メンヘラはいた。でも彼ら彼女らには当たり前のように恋人がいたり配偶者がいたりした。「そんな恵まれた状況でメンヘラだなんて甘えんな。年齢イコールの僕はそんなやつらなんかよりもっと冷たい孤独にあるんだぞ〜」なんて勝手に憤って、他のメンヘラに面と向かえばマウント取っていた。孤独にも耐えて、そのことについて泣き言を言わず唇を結んでおくことがハードボイルド的でかっこいいと思っていたのだ。痛たたたっ……。これを大学生のときにやっていたんだから痛いなんてもんじゃない。そして今でもそういう思想は自分の中に残っている。

 思い返せばそういう泣き言を言っていたわけだし、完全に孤独かと言えばそうとも言いづらい。未だに付き合いが続く気の合うやつらともこの頃から面白おかしくやっていた。楽しかったなぁ。

 

 もう一つ大きな原因があるとすれば童貞を捨てたときだと思う。SNSで知り合った人が相手だった。バツが一つついた人で、六つ年上だった。なんとなく影がある人。その日に初めて実際に会って、一緒に映画観て少しお酒飲んでホテル行っただけなのにしばらく忘れられなかった。たった一日の関わりだったのに。しばらくその人のことを思い出すと動揺して、思考がまとまらなくなった。お熱だったんだと思う。忘れるために接点を無くした。その時思った。「たった一人の人間相手になんでここまで動揺しなきゃならない? なんで彼女のことばかり考えなきゃいけない?」

 すごく惨めな気分だった。もう二度とこんな思いしたくないと思った。一人の人間のことで気を揉むことが情けなかった。この時の感情が大きかったんじゃないかと思ってる。

 

 それから年月が流れて、大学出て働きだしたりした。時々、飲みにいった先で上手く会話が進んだ相手と一晩一緒に過ごすこともあったりしたけど、最初みたいな動揺が来ることはなかった。もしかしたら、ってタイミングもあったけど接点をなくして休日は趣味に取り組んでれば忘れられた。今も僕自身何も変わらずコミュ障の、成長のないやつだ。だけどそういう惨めな感情は二度と持たずに済むと勝手に確信していた。克服だと思っていた。

 

 最近、そのもしかしたら、ってことがまたあった。最初は気の迷いや錯覚だと思っていた。酒でごまかし、身体を動かしてればその内消える感情だと思っていた。一ヶ月経っても消えず、二ヶ月や三ヶ月経ってもまだ消えない。あの時と同じだと気付くと愕然とした。やっぱり情けない。

 どうしたらいいかまだ分からない。時間が解決してくれるのを待っている。つくづく感じる。とんだ欠陥じゃないかって。